プラス思考物語

昔々、ある熱帯地方に王様が住んでいました。
その王様には大変楽観的な副官がいた。
実はその副官があまりにも楽観的で、いつもすべて良い方向に見るために、
王様は苛立ちを感じることがしばしばあった。
ある日、王様とその副官はジャングルを抜ける旅をしていた。
そして王様が朝食用に新鮮なココナッツを割っていると、
ナタがすべって足の指を一本切り落としてしまった。
痛みのために、片方の足を引きずりながら副官のもとへ行き、
その不運を見せると、副官は
「それはすばらしい!」と叫んだのだ。
「なんだって?」
王様は驚いて尋ねた。
「これは本当に祝福です!」
その答えを聞いて、王様はたいそう腹を立てた。この男は、
明らかに自分の不運をからかっている。
「信じてください」と副官は熱心に言った。
「うわべは事故に見えますが、この背後には私たちのわからない幸運があります」
そこまで聞いてもう我慢ならなくなり、怒った王様は副官をつまみあげて、
干しあがった井戸の中に投げ込んでしまった。
そして自分の城に戻ろうと歩き始めた。道すがら、王様は首狩族の一団につかまり、
彼らは王様が今月火山に捧げる生け贄にもってこいだと決めたのだった。
その狩人たちは王様を司祭のところに連れて行った。
そして司祭のわけのわからない名誉とやらのために、王様の準備にとりかかった。
嫌がる生け贄に聖油を塗っていると、司祭は王様の足の指が一本ないことに気がついた。
「残念なことですが」とその司祭は王様に伝えた。
「あなたを生け贄に使うことはできません。火山の女神は完全体の生け贄のみを受け入れてくれるのです。
お行きなさい。あなたは自由です」
王様は大喜びで、片足を引きずりながら部族の集落を出て行った。
それから急に副官の言ったことが正しかったことがわかってきたのだ。
不運に見えたことの背後に、本当の祝福があったとは! 
王様はできるだけ急いで副官を置き去りにした井戸を探しに戻った。
すると彼はまだ井戸の中で座り、楽しそうに口笛を吹いていたので王様は喜んだ。
(彼は正真正銘のプラス思考だった!)王様は副官に手を差し伸べ、井戸から彼を引き上げてしきりに謝った。
「井戸に投げ込んだりして、本当にすまないことをした」王様は、彼の肩のほこりを払いながら、告げた。
「わしはここの人につかまり、火山の中に投げ込まれるところだったのじゃよ。
だがその時、足の指が一本ないことに気がついて、わしを解放したのじゃよ。
お前が言った通り、奇跡が起こったのじゃ。なのに浅はかにもお前をこの井戸の中に投げ込んでしまった!
わしを許してくれるかね?」
「謝罪には及びません」と副官は答えた。
「王様が私を井戸の中に置き去りにしたのも、祝福でした」
「さてさて、こんなことからお前はどうやって肯定的なものを引き出すのだね?」
王様は質問をした。
「王様、もし私が王様とご一緒していたら、彼らは私を生け贄にしたでしょう!」

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見えていることだけで物事を判断しても、そこには私たちに見えないもっと広い見地から見た状況がある。
真の信頼とは、今起きていることの背後に慈悲あふれる計画があるのを忘れないことだ。試練の時期には、
目に見えることだけに振り回されてはいけない。愛のみが真実であり、その他のいかなるものも認識違いなのである。


「すべての日が、それぞれの贈り物をもっている」

                 
-- マルティアリス(ローマの詩人)--